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『ルベーグ積分30講』 志賀浩二著(その1)

長沼伸一郎の著書に影響されて、ルベーグ積分についてまずは入門書で勉強することにした。この本を要約しても丸写しになってしまうので、私なりに著者のねらいを推理してみることにした。それにしてもhatenaブログは使い勝手が良い。Latexも使えるので、書き込み意欲が湧いてくる。

 

第1講 広がっていく極限
ここで著者は直線上の極限から2次元、3次元の極限を示すのだが、そのねらいは何か?
リーマン積分のやり方とは異なる自由な積分方法(ルベーグ積分)を暗示するためである。
極限というと何らかの値に近づいていく描像だが、著者はそれを「実数、極限、微分というように構成されていく数学の演繹体系が創り出した」観念的な映像として退ける。
この数直線上の極限という描像から離れて自由に極限を考えると、近づくというよりも埋まっていくという描像の方が極限概念に適していることが分かる。特に2次元、3次元の極限を考えると「近づく」ではなく「埋まっていく」という描像でないと極限が説明できない。
1次元の場合でも極限の値に向かって二点間の距離区間が次々に足されて埋まっていく描像とすると、この描像に n次元の普遍性があることが分かる。
しかし問題はそのような描像を数式表示できるかである。少なくともデカルト座標を想定すると例外的な場合を除いて数式表示不可能であるといえる。
著者は円に内接するn多角形の極限により円の面積を求めることを例外的な場合としている。確かにこの場合なら数式表示可能である。他にも埋め方に規則性がある場合は数式表示可能かもしれない。
この時、面積の値について著者は本質的な説明をしている。例えば円の面積が一つの値になるとはどういうことか。
それは円に内接するn多角形に1つの値を対応させ、nを増加させながらその値を1次元上に投影した値である。(多角形の面積は既知とする)
このように定義するメリットは、多角形がどのような形状でも集計可能ということである。リーマン積分の面積のようにX軸に対して垂直な短冊部分として行儀良く整列する必要はない。
さらに一般化すれば、図形に内接する多角形がどのような形状でも構わないということになる。となると図形も円に限らずいかなる不規則な図形でも、内側の多角形で極限まで埋めつくすことができることになる。
このとき常に n-1多角形の面積<n多角形の面積 となるように覆っていけば、面積の極限を求めることができる。だがそれはリーマン積分のように均等な\mathrm{d}xに微小区分して足し合わせるという描像ではない。現段階では、どのように数式表示できるのか分からない。
このような発想が出てきた背景には、微分不可能な不連続関数の積分をどのように求めるかという問題に応えるためである。不連続を連続にする方法は、X軸と不連続関数の間の面積を内側から増大する図形で埋めつくしていくことである。そうすると、増大する図形の面積は連続的に増大することになる。

 

第2講 数直線上の長さ
ルベーグ積分においては極限は「近づく」のではなく「埋めつくす」のであるから、1次元上においても、埋めつくす単位である区間の長さが重要となる。また次元が高くにつれて面積、体積も重要になるのだが、それらの本質的な定義が欠けているのである。
ルベーグはそれらの値をすべて点集合の測度として定義した。
例えば1次元の場合は、数直線を実数の点集合Rとみて、区間Rの部分集合Sとするのである。このS有界であるとは、適当な正数をとると、x\in Sについて、
    -K<x<K  が成り立つことである。
端点がa, bである閉区間[a, b]は、[a, b]={x| a\le x \leq b} であると本書ではさりげなく書いてあるが、x有界集合Sの要素であるから、この式は、閉区間[a, b]有界の点集合であることを示していることになる。

 閉区間 I=[a,b]の長さはb-a である。

この定義は当たり前のように見えるが、有界の点集合I=[a, b]b-aという値を対応させているだけであることに留意する必要がある。

なぜ点集合I=[a, b]に、数値b-aが対応するのか理由は問わないのである。ただ測度をそのように定義するというだけであり、他の数値を定義しても構わないのである。

つまり測度とは集合と数値を対応づける約束であって、原点からのa, bの距離の差という概念ではないのである。同様に2次元、3次元の有界点集合である何らかのI区間)にもある値が対応することになる。そして長さ、面積、体積は、有界点集合に対応する値として定義される。この値が測度m(I)である。
1次元の場合は、  m(I)=b-a である。
この定義から面白い結果がでる。
有界の点集合I=[a, a]の測度はm(I)=a-a=0 である。
つまり測度の定義から、1点の測度(つまり長さ)がゼロになるのである。
このことから、端点を除いた開区間、半開区間もすべて、同じ値になることが分かる。
       m((a, b))=m([a, b)=m((a, b])=b-a
さらに、1点の集合と空集合は区別されるが対応する値は0で同じことになる。
つまり[a, a]は1点aだけの集合であるが、(a, a) は端点aを含まないのだから空集合である。しかし、上の式により同様に対応する値が0になることが分かる。
       m(\phi)=0

単純な定義からこのような結果が次々に出て来るのは興味深い。
先走るが、ディリクレ関数とは無理数のときが0,有理数のときが1となる不連続関数であるが、稠密な点として構成されるグラフの面積がどうなるか謎であった。直観的にゼロになるのではないかと思われていただけで根拠がなかったのであるが、ルベーグの定義で点の長さが0となると、点の微小区間で定義された積分が0になることが分かる。

平行移動による不変性
実数hを1つ定めたとき、対応 Th:x →x+h
hだけの平行移動を表している。区間Iは、この平行移動によって、やはり区間へと移り測度は不変である。
例えばI=[a, b]のとき、I+h=[a+h, b+h] である。
m(I+h)=(b+h)-(a+h)=b-a
故に m(I+h)=m(I)
平行移動というとまたもや原点からの移動という描像になるが、私は定義されていること以外の描像は用いないことにする。だから、ここで言っていることは、有界集合の要素xに実数hを加えて新たにつくった有界集合は測度が同じであるということである。

有限加法性
S_1, S_2, S_3,..., S_nRの部分集合として次の性質をもつとする。
(i)   i\neq jのとき、S_iS_jには共通点がない。
(ii)各S_iは測度をもつとする。
  このとき、和集合S=S_1∪S_2∪・・・∪S_n は測度をもち、
  m(S)=m(S_1)+m(S_2)+・・・+m(S_n) となる。
これは切った糸を各々測って合計すると元の重複しないようにつないだ糸の長さになるという描像だが、これについては著者による注意書きがある。
「この段階では、区間の長さしか定義していないのだから、単に有限個の共通点のない区間の和集合にも、測度を与えることができるということである」

つまり区間が重なり合う場合は、この段階の側度定義では重複部分の側度を求める方法がないということである。