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『ルベーグ積分30講』 志賀浩二著(その2)

第2講続き。
実数の連続性
前回の有限加法性では解析に役立たないことは、極限が無限だから当然である。
そこでお約束の実数連続性だが、またか、という気になる。ただ、リーマン積分とは異なるのだから、連続性の定義についても違いがあるのだろう、そこに興味がある。
著者は実数の連続性を次のようにまとめる。

      a<a_1<a_2<・・・<a_n<・・・<c,   \lim a_n=c

そして、半開区間の系列を考えるとしている。

        I_1=[a, a_1), I_2=[a, a_2), ・・・, I_n=[a, a_n),・・・  I=[a, c) 

 だが、ここには飛躍がある。実数の連続性を説明しながら、いつのまにか話が有界集合の系列に移っていることに留意する必要がある。数学者は「言わんでも分かるじゃろ」ということかもしれない。何が言いたいかといえば、「半開区間」と書いてあるので、ついつい数直線上の区間をイメージしてしまうのだが、ここで「半開区間」とあるのは有界の点集合の別名である。そうした集合が並んでいるというイメージである。
このとき、次のようになるが、集合だから当然包含関係にある。
数直線上の半開区間が伸びていくという描像ではなく、点集合が連続的に大きくなっていくという描像である。

         I_1\subset I_2\subset I_3\subset ・・・\subset I_n → I (2)

が成り立つ。ここで → は

      I=\LARGE\cup_{\normalsize n=1}^{\normalsize \infty} \normalsize I_n  

つまり実数の連続性から点集合の連続性へ話が移っているのだ。無限の和集合だから、増大分を無限小にできるので連続していることになる。
(2)のそれぞれの測度を考えると

  m(I_1)=a_1-a, m(I_2)=a_2-a, ・・・, m(I_n)=a_n-a, ・・・ , m(I)=c-a

ここで実数の連続性とリンクすることになる。実数の連続性は

   a<a_1<a_2<・・・<a_n<・・・<c,   \lim a_n=c

であるから、それを用いて、各項からaをマイナスすると
   a_1-a<a_2-a<・・・<a_n-a<・・・<c-a

となる。ゆえに

        m(I_1)<m(I_2)<・・・<m(I_n)<・・・ → <m(I)    

が成り立つ。
この本には書いてないのだが、一つ気になることがある。
実数の連続性は次のとおりである。

       a<a_1<a_2<・・・<a_n<・・・<c,   \lim a_n=c 
これは極限値がcであるとしている。
これに対し、有界集合の 極限は次のとおりである。

      I_1=[a, a_1), I_2=[a, a_2), ・・・, I_n=[a, a_n),・・・  I=[a, c) 
ここでは、極限値cは含まれていない。(右端のIが半開だから)
つまり有界集合の極限としての点集合Iには、点cが含まれていないのだ。
これは実数の単調増加数列が決して極限値cに到達しないこと、つまり・・・\le cではなく・・・<cであることと合致しているのだが、すると点集合も同様に限りなく図形に内側から接近しつつ極限では一致しないことになるのだろう。極限である点の長さだけズレるのだろう。だが、図形の境界線を構成する点の長さは測度0だから、数値としては一致するということだろうか。これは0.9999・・・が1に等しいことを点集合の描像で説明していることになるのかもしれない。
さらに著者は半開区間ありきで話を進めるのだが、半開区間であることは絶対必要である。なぜなら、この段階では区間が端点で重複する部分を除去する演算が定義されていないからだ。

だが、半開区間では各有界集合は最大の点を持たない、つまり端点の最大a_n点を要素として含まないことを意味している。すると実数a_nが収束無限することを根拠にして、有界集合も収束無限するということが果たして保証されるのだろうか。単調増加する以前に各半開区間それ自体が最大の端点a_nに収束するのだというのであれば循環論法になるのではないか。よく考えてみたい。
よく考えてみたら疑問が解けた。次の2つの半開区間を見比べてみる。

      I_1=[a, a_1), I_2=[a, a_2) 

と確かにI_1の方には端点のa_1は含まれていないが、I_2の方にはa_1が含まれている。つまり有界集合は実数aの収束よりも1点遅れて収束しているのだ。
この節の標題は「実数の連続性」となっているが、実際の内容は以上みたとおり、実数の連続性を根拠として、①点集合の連続性と②点集合の測度の連続性の二つを説明しているものとなっていることが分かる。

完全加法性
この節の内容を描像で言えば、一本の線をバラバラにして、各々の線の長さを測って合計すると元の線の長さになるということだが、なぜこんな当たり前のことを定義するのだろうか。リーマン積分の場合はX軸上に並んだ微小区間を足し合わせるという描像だが、もっと自由にバラバラになった微小区間を足し合わせても、一本の線に戻るのであれば、バラバラのままでも積分できるだろうというのが狙いかもしれない。あくまで現段階での推測だが。また極限概念を使って定義するのも、半開区間がどこまで微小になっても成立するということが言いたいのだろう。点にまで微小になった区間でバラバラのまま図形にあてはめて元に戻すとどうなるか、直観を超えたことが起きるのかもしれない。

バラバラにするのだから包含関係ではなく別の半開区間を考える。今度は増大して含むのではなく、区間ごとに繋がっていくイメージである。

        J_1=[a, a_1), J_2=[a_1, a_2), ・・・, J_n=[a_{n-1}, a_n),・・・

これらは互いに共通点のない半開区間の系列であり、全部合わせると次のようになる。

                  I=\LARGE\cup_{\normalsize n=1}^{\normalsize \infty} \normalsize J_n  

同様に

             \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} m(J_n)=m(I)
が成り立つ。
ここで前回の「平行移動による不変性」を適用すると、各々の半開区間Jをバラバラに平行移動しても、それらが重複しない限り、長さは変わらないことになる。
平行移動後のJ, Iにそれぞれバーをつけると次のようになる。

                \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}m(\overline{J_n})=m(\overline{I})

自然数の無限和がマイナスになるというオイラーのとんでもない公式もあるが、この場合はcという極限があるのだから無限に足してもいいんじゃない、と思ってしまう。しかし、著者は「可算無限個の区間の和だから、ふつうの意味では長さは測れない」などと気になることを言うのである。
「定義はあとでもっと正確に述べることにする」とあるので、期待して待つことにしよう。

以上が完全加法性の定義だが、これにより測度概念を有限加法性から「もち上げたことになる」と著者は言う。それならなぜ「無限加法性」と言わないのか?
おそらく、平行移動しても成り立つということで、無限よりも「完全」が適しているのだろう。
また収束無限にかかる完備性をcompletenessといい、完全加法性がcomplete additivityだから、この「完全」は発散無限ではなく収束無限にかかる加法性を意味するのかもしれない。少なくともこの節で議論しているのは収束無限である。
私はどうもこの本の文脈がよく分かっていない。連続性を議論しているが、背景説明もなく最初から有界集合ありきで収束無限のことしか議論していないである。なぜなのか分からない。先を読んでいるうちに分かるかもしれない。
まあ、積分で値を求めるのだから、当然、収束無限が前提だとは思うのだが。