読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『ルベーグ積分30講』 志賀浩二著(その3)

何事も先達はあらまほしきことなり・・・という声が聞こえそうだが、まあ、ここに書いている思い込みが間違っているか正しいか、どちらかであることは排中律により確かであることは間違いないので、いずれ自分にも分かるだろうということは数学の大きな魅力である。後で読み返して笑うのも一興である。試行錯誤の備忘録としたい。

第3講 直線上の完全加法性の様相
ここでは測度0の集合(零集合であって空集合ではない)とか、測度1の集合などが説明されるのだが、どうも閉区間か開区間か端点の取り方によって差が出てくるようだ。

有理数を囲む集合
ここの部分がよく分からないのは私が点集合を理解していないからだと思う。
単位区間[0, 1]を考えて、その中の有理数点を囲んだ区間をつくって合計すると測度が0になるという理屈である。例えば有理数r_1を正数\varepsilonで囲んで閉区間をつくるのである。

   \LARGE [\normalsize I_1=r_1-\Large \frac{\varepsilon}{2} \normalsize, r_1+\Large \frac{\varepsilon}{2} \normalsize \LARGE]  m(I_1)={\varepsilon}

さらに、その半分以下の閉区間I_2をつくり、I_1と重ならないようにする。

      \LARGE [\normalsize I_2=r_2-\Large \frac{\varepsilon'}{2} \normalsize, r_2+\Large \frac{\varepsilon'}{2} \normalsize \LARGE]     m(I_2)={\varepsilon'}\le \Large \frac{\varepsilon}{2} \normalsize     I_1 \cap I_2=\phi
これを続けていくと、Iの総和J有理数を飲み込むというのである。

          J=\LARGE\cup_{\normalsize n=1}^{\normalsize \infty} \normalsize I_n  

 そしてJの測度を求めると次のように2εとなる。
    m(J)= \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} m(I_n) \le {\varepsilon}+\large \frac{\varepsilon}{2} \normalsize +\large \frac{\varepsilon}{2^2} \normalsize+・・・+ \large \frac{\varepsilon}{2^n} \normalsize+・・・=2{\varepsilon}

そして正数{\varepsilon}はどんなに小さくともよいから、結局、有理数の集合の測度がゼロになるというのである。
このことは、前回のとおり点の測度が0なのだから、有理数の点の集合の測度がゼロになることから直観的にも正しいと思われる。お見事だが何かひっかかる。
気になるのは、Iの総和で有理数の点が本当に埋めつくされるのかである。
これが言えるためには、次の閉区間が隙間なく繋がっている必要がある。

    \LARGE [\normalsize I_1=r_1-\Large \frac{\varepsilon}{2} \normalsize, r_1+\Large \frac{\varepsilon}{2} \normalsize \LARGE]  \LARGE [\normalsize I_2=r_2-\Large \frac{\varepsilon'}{2} \normalsize, r_2+\Large \frac{\varepsilon'}{2} \normalsize \LARGE] 

もし、端点の2つの数が有理数であれば、次のとおり有理数の稠密性により中間の有理数qが存在することになる。するとIは互いに閉区間であるから、中間の有理数q区間の外に取り残されて埋めつくされないことになりはしないか。

   q=\displaystyle \frac{\left(r_1+ \Large \frac{\varepsilon}{2}\normalsize\right) +\left(r_2-\Large \frac{\varepsilon'}{2}\normalsize\right)}{2}

だから、{\varepsilon}有理数ではなく無理数であろう。つまりここで問題にしているのは、有理数可算集合であるとは、2点が区分されて数えられるということだ。するとその2点の中間には稠密性により常に別の有理数が存在することになる。それを全部閉区間で囲むことが本当に可能なのか、ということである。

このことについてよく考えてみると、要するに{\varepsilon}は任意だから何でも良いのだ。最初の内は著者の言うとおり、「例えば{\varepsilon}=0.000001くらいに思って」も良いのだろう。(この場合の{\varepsilon}有理数だから疑問が生じるのだ)
だが有理数の点が稠密になっていくにつれて、{\varepsilon}がいくら極小であっても有理数である限り、有理数点を覆い尽くすことは不可能である。よって{\varepsilon}を正の無理数にとれば上式のq無理数になって有理数を全部閉区間で覆うことができる。要は覆うためなら{\varepsilon}は何でも良いのだ。何しろ{\varepsilon}はゼロに限りなく近い極限操作のための数だから、最終的には当然、実数連続の無理数になるだろう。

測度0の集合
定義
数直線上の集合Sが次の性質をもつとき、Sを測度0の集合という。
どんな小さい正数{\varepsilon}をとっても、高々可算個の区間列Iを適当に選ぶと

  (i)     S\subset \LARGE\cup_{\normalsize n=1}^{\normalsize \infty} \normalsize I_n  

  (ii)    \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} m(I_n) < {\varepsilon}

とできる。測度0の集合をまた零集合ともいう。

高々可算個とは有限個または可算無限個ということで、「可算無限」以下ということだが、正数{\varepsilon}の幅の区間Iで覆っていくのだから、可算無限個であることは分かる。
だが、

   \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} m(I_n) < {\varepsilon}

これが成り立つとき、測度0とはどういうことか。
このことは{\varepsilon}より小さい正数はゼロだということである。数学者なら、当たり前だから言わんでもええじゃろ、ということだろうが少し考えてみたい。
もし{\varepsilon}より小さい正数xがあると仮定すると、0<x<{\varepsilon}となる。しかし{\varepsilon}はどこまでも小さくできるのだから、そのようなxがもし存在すれば{\varepsilon}の定義からxもまた{\varepsilon}である。つまり{\varepsilon}の定義から、{\varepsilon}より小さい数がゼロ以外に存在しえないことが分かる。
あるいは、0<x<{\varepsilon}を仮定すると、次の二つの式が考えられる。
0.999999  <1-{\varepsilon}<1
0.9999999<1-x<1
{\varepsilon}>0なので、①の左辺は小数点以下が必ずどこかでストップする。だが、{\varepsilon}よりも小さなxによって②のように小数点以下をさらに一桁進行させることが可能である。このことは{\varepsilon}をどこまでも小さくすることにより、さらに小数点以下を無限に進行させることを保証する。だが、そうなると0.999・・・=1 であるから、

②により、1\le1-x\leq1 となり、x=0となる。

0.9999・・・=1であることは自明とは思わないが、初等的証明としては、α=0.9999・・・とおくと、10α-α=9となり、α=1となる)

もちろん本書ではそんな些末なことより、内容が一杯詰まった有理数点の集合の測度がゼロになることに驚けと言っているのだが、点の測度が0であるから、それぐらいでは驚かない。