『ルベーグ積分30講』 志賀浩二著(その4)

第3講続き。

繰り返されていく3等分
標題から予想されるようにかなり複雑なので、イメージをつかむには本書の図を見ていただくしかない。ただ、最初のイメージは数式でも湧くだろう。
数直線の単位区間I=[0,1]を3等分して、その真中の開区間J_1として抜き取るのである。

  J_1=\left(\Large \frac{1}{3}, \frac{2}{3}\normalsize \right)   m(J_1)=\Large \frac{1}{3}\normalsize

そして、J_1の左右に残った閉区間\Large[\normalsize 0, \Large \frac{1}{3}]\normalsize\Large[\frac{2}{3}, \frac{3}{3}]\normalsizeをまた3等分して真ん中を抜き取るのである。(J_1が開区間だから、J_1を抜き取った残りは閉区間となる)

  J_{21}=\left(\Large \frac{1}{9}, \frac{2}{9}\normalsize \right)J_{22}=\left(\Large \frac{7}{9}, \frac{8}{9}\normalsize \right) J_2=J_{21}\cup J_{22}   m(J_2)=\Large \frac{2}{9}\normalsize

つまり長さ1から中央の\large \frac{1}{3}を抜き取るのだから、残りは左右合わせて \large \frac{2}{3}となる。
その左右の計 \large \frac{2}{3}から中央の\large \frac{1}{3}ずつ取り除くのだから、抜き取る測度は\large \frac{2}{3}\normalsize \times \large\frac{1}{3}\normalsize =\large \frac{2}{9}\normalsize となる。上の式は左右分かれているからJ_{21}は測度\large \frac{1}{9}\normalsizeだが、左右合わせて \large \frac{2}{9}\normalsizeとなる。
これを無限に繰り返し、今回は、前回とは逆に抜き取った方を合計するのである。
要するに残した \large \frac{2}{3}\normalsizeから\large \frac{1}{3}\normalsize抜き取って合計する作業を繰り返すのだから、

  m(J)=\large \frac{1}{3}\normalsize+\large \frac{1}{3}\left(\large \frac{2}{3}\normalsize \right)\normalsize+\large \frac{1}{3}\left(\large \frac{2}{3}\normalsize \right)^2\normalsize+・・・\normalsize+\large \frac{1}{3}\left(\large \frac{2}{3}\normalsize \right)^{n-1}\normalsize+・・・=\large \frac{1}{3}\normalsize \displaystyle \left(\frac{1}{1-\frac{2}{3}}\right)\normalsize=1

 なんとまあ数学者はややこしいことを考えるものだと思うが、中央から\Large \frac{1}{3}\normalsizeづつ抜き取ってその左右から抜き取ることで、区間I=[0,1]から開区間がどんどん抜き取られて跡形もなくなることが楽にイメージできる。すると抜き取って残ったものは、閉区間だけということになる。
以上は本書の説明どおり計算を追えば間違いなくそうなるので、その限りでは疑問は生じない。前回の測度が0になったのは、測度0の点の周りを{\varepsilon}で囲んだものを集計したのであり、今回は測度\Large \frac{1}{3}\normalsizeから初めて徐々に小さく抜き採った線分を集計するのだから方向が逆になって、測度1になるということである。
だがしかし、著者がなぜ有理数を囲む場合に閉区間を使い、抜き取る場合に開区間を使うのか、その理由が私は気になるのである。後で開集合、閉集合が出て来るので、その時に考え直そう。今のところの理解では、残り物には福があるということで、点を残すためだろうと思う。開集合を残してしまったのでは、点が残らなくなる。[1, 1]は集合としてみると、その要素は点1であるが、(1, 1)は、空集合である。
しかし、有理数の点集合の測度が0だとすると、有理数以外の無理数の集合の測度が1かもしれないと予想されるのだが、それは次のカントル集合で打ち砕かれることになる。

カントル集合
カントル集合とは、単位区間Iから先程のJの開区間の系列を取り除いて得られる集合である。だから残った方の閉区間の集合である。
カントル集合が分かりにくいのは3進法表示だからである。本当に抜き取った残りの閉区間が1を含まない0と2だけの数字になるか、(そうなるように\Large \frac{1}{3}\normalsizeづつ中央から抜いているのだが)それは本書を読んでもネットで探しても分からないので自作してみた。ある程度の階層まで3進法表示すると次のようになる。(小数点の3進法表示はExcelで求める方法がネットで公開されている)

 

f:id:sollers:20170420123540j:plain

誰もが疑問に思うのは、例えば最初の閉区間\Large[\normalsize 0, \Large \frac{1}{3^n}]\normalsizeなら\Large \frac{1}{3}\normalsizeが三進法表示では0.1となるから、どこまで階層を下げても\Large \frac{1}{3^n}\normalsizeは必ず0.000・・・1となり、第n位に1が含まれてしまうのではないかという疑問である。
しかし、\Large \frac{1}{3}\normalsize=0.33333・・・無限小数にすると、三進法では図示(赤字)したように0.0222・・・となる。同様に1=0.999・・・とし、三進法で0.2222・・・としている。(図の小数点6桁以下は無限循環小数である)
なんだかご都合主義のようだが、これを禁ずる理由はないので、カントールの意を汲んで変更表示している。
こうしてみると、階層が下がるにつれて、必ず2か0で構成されることが分かる。
これが必ずそうなるという証明は現在の私には難しいので後日の宿題とし、とりあえずイメージでそうなりそうだと納得しておく。
カントールはこの2を1に置換すれば、2進法表示の実数に全単射できるというのである。
確かに1が出て来ないのは1が出るJを全部抜き取っているのだから分かる。だが、残りの数の2を1に置換すると2進法の実数にすべてもれなく対応するか(全単射)は直観では分からない。この図でなんとなくそうなりそうだと思うだけである。本書でもその証明は省略されているので、現段階ではとりあえずイメージで納得しておく。
このカントル集合の特徴は、実数もまた零集合であることを示していることである。
Jの測度が1で、その残りがカントル集合であるから測度は0である。そして2進法に変換すると実数に対応するのである。
したがってカントル集合は連続体の濃度があり、しかも測度0となるのだから、さすがに私もこれには驚いた。しかし、よく考えてみると無理数も点としては測度0である。
I=\Large[\normalsize \sqrt{2}, \sqrt{2}\Large]とすると、m(I)=\sqrt{2}-\sqrt{2}=0となる。
だから、測度の定義にしたがう限り、点としての無理数も測度0である。
するとたとえ連続体濃度があっても、無理数を点集合として扱う限り、それもまた測度0になるのである。線分で極限まで抜き取った残りが点になるとしたら、測度が0になるのももっともなことであろう。

完全加法性と零集合
著者はここで複雑な図形を把握しようとして考え出された完全加法性が、測度0の零集合を生み出してしまったことを、「測度論の中できわ立った対照性を示」すものとしている。
測度の「網の目にもついにかからなかった集合が最後に残されてくる。それがカントル集合である。カントル集合は、この網の目のどれよりも細かく分布している。そこに’形’というような考えを、もはや付与することはできないのである」(22頁)
私の感想としては、連続体濃度の測度が0であるのにどうやって積分するのかと心配になるのだが、まあ、それは極限の有界集合を点として扱わなければいいんじゃない、と思うのである。
さて後日読み返して笑うのも一興と言ってしまったが、とんでもない思い違いをしていた。まだ第3講だから早めに修正しておく。
ルベーグの考えている集合は、点だけの集合ではなく区間の集合でもある。私は点集合が図形を埋めつくすイメージを持っていたのだが、そんなものでは積分できない。(点の測度は0だから)
どうも点と区間の二つで集合を考え、点だけが残ると零集合としているようだ。だから当然、積分区間で行うのだろうと推測している。